一夜で消えた木地師の隠し宝
どんな伝承か
針生から桧沢川をさかのぼって四キロほど山へ入った板橋中曽根という緩い傾斜地には、かつて七十戸ほどの木地師が笹囲いの小屋を並べて住んでいた。木地師たちは裕福で、現金の乏しい針生の村人はしばしば金を借り、その借財は先祖伝来の身代に並ぶほどにふくらんだ。ある日、村人は木地師が鷹を飼っているのを見つけてしまう。無断で鷹を飼うことが固く禁じられていた時代で、木地師たちは訴え出られるのを恐れたのか、一夜のうちに残らず立ち去った。その際、頭領の家にあった大きな石舟が消えていた。村人は宝の金の柄杓を入れて地中に埋めたに違いないと考えて捜し回ったが、いまだに掘り当てた者はいない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史)
『田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説』は、会津の田島町の町史のうち民俗を扱う巻の、伝説を論じた節である。針生・糸沢・金井沢・折橋などに伝わる岩魚の棲まない沢、ダイタンボウの足跡、弘法清水、竜燈、天狗隠し、河童駒引き、アズキトギなどの伝説を、土地の言葉を交えた語りで載せる。自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分けて動物・地形・地名・人物・幽霊・妖怪変化などの項を立て、各話のあとに伝説の型や会津の類例を論じる。