君ヶ畑の政所茶と茶もみ歌
どんな伝承か
近江の東小椋村はもと国境近くの広漠たる山であったが、木地の原料を足利時代に伐り尽くし、ある者は他国の山を求めて出、残った者は跡地を経営して畑を作り、炭を焼き、また茶を製して今日に及んだ。小椋のいわゆる政所茶も六ヶ畑の野生の茶を次第に培養したもので、後には玉露までを産出した。木地師の往来のついでを利用して、その茶は遠国までも売り出された。本居宣長が採録した君ヶ畑の茶もみ歌に「こいで揉む茶が秋田へくだる、秋田女郎衆にふらりよかよ」とある。ふるとは茶筅を用いて番茶の泡を立てて飲むことをいうと柳田は説く。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。