馬を驚かせたザオンドの河童と家伝薬
どんな伝承か
荒海川の上流、ザオンドと呼ぶ深い淵に河童が棲んでいたという。川に沿って羽塩の家々が並び、淵はちょうど甚右エ門という家の真向かいにあった。あるとき主人が、一日代掻きをして泥まみれになった馬をここで洗っていると、馬が急に跳ね上がって厩へ駆け込んだ。追っていくと飼葉桶が転がっており、起こした下から河童が這い出した。捕らえて縛ろうとすると涙を流して詫び、スバコの薬の作り方を教えると申し出る。放してやると河童は製法を伝えて淵へ戻った。キハダの皮などで作ったその薬はよく効き、遠方からも求める者が来た。以来この家の家伝薬となったが、当主自身が調じたものでなければ効かないという。
原典より
荒海川の上流はザオンドという所に深淵があって、ここにもと河童がすんでおったという。—— 田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史)
『田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説』は、会津の田島町の町史のうち民俗を扱う巻の、伝説を論じた節である。針生・糸沢・金井沢・折橋などに伝わる岩魚の棲まない沢、ダイタンボウの足跡、弘法清水、竜燈、天狗隠し、河童駒引き、アズキトギなどの伝説を、土地の言葉を交えた語りで載せる。自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分けて動物・地形・地名・人物・幽霊・妖怪変化などの項を立て、各話のあとに伝説の型や会津の類例を論じる。