きつねに化かされた話
どんな伝承か
多田に忠兵衛という百姓がいた。一人娘を栃本へ嫁がせ、孫も生まれたので、時々訪ねてはごちそうになるのを楽しみにしていた。ある秋の栃本の祭りの日、忠兵衛は大豆畑やそば畑の中を祭ばやしを聞きながら歩いて行き、大好きな酒をすっかりごちそうになった。日が暮れて赤飯と油揚げの土産を手に家路につくと、いつの間にか道が消え、海のまっただ中にいた。尻をまくり土産を首にかけ、深い深いと叫びながら歩き続け、疲れ果てて眠り込んだ。夜露に濡れて目を覚ますと、そこはそば畑のまん中であった。妻は、唐沢山には狐が多く、狐は油揚げが好きだから化かされたのだと言ったという。
原典より
多田に忠兵衛という百姓がいた。—— 田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説(田沼町(編)・田沼町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説(田沼町(編)・田沼町史)
『田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説』は、田沼町が編んだ町史第一巻から、伝説とことわざの部分を収めたものである。池や塚の祟り、神社の霊験、佐野宗綱の出陣、藤原秀郷ゆかりの鎧、義民、地名の由来、落人、寺社の縁起など、町内各地に伝わる話を地名や家名とともに記す。伝説を英雄偉人・義民・地名・落人・寺社縁起などに分けて並べ、続く節では調査員の協力で集めたことわざを五十音順に掲げる。