山芋をめぐる兄弟と時鳥の鳴き声
どんな伝承か
時鳥の鳴き声の由来を説く「時鳥と兄弟」の話は各地で知られるが、津久井郡栃谷に住んだことのある山岳家、高畑棟材が、栃谷で聞いた形として「山麓通信」に書き残している。この土地では、五月五日の節句に山薬すなわち山芋を食べないと人が蛆虫になってしまうと言い伝えていた。節句が近づいたので兄が山芋を掘ってきて戸棚にしまっておいたところ、翌日には頭と尻尾ばかりが残り、中の良いところが消えていた。弟が盗ったものと思い込んだ兄は出刃庖丁で弟の喉を突き、それゆえその鳥は「オトノドキッチョ」と鳴くのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史)
『神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話』は、県史講座要録の県下の民俗篇に収められた、中村亮雄による講述「伝説と昔話」である。柳田国男の白米城伝説の研究を手がかりに、三浦半島の二反ヶ城、鶴見の見返し坂、湯河原の石橋山合戦の伝承など県内の伝説を取り上げ、藤沢・津久井・平塚などの昔話や笑話、世間話を紹介する。「はじめに」「伝説」「昔話」「あとがき」の四節からなり、昔話は本格昔話・派生昔話・笑話の別に沿って類話を並べる。