親の腹を裂かせた音信山の時鳥
どんな伝承か
市原郡鶴舞町矢田の古刹光明寺の背後にそびえる音信山は時鳥の伝説で名高く、「夫木集」の歌にも詠まれた。初夏になるとどこからともなく一羽の時鳥が来て、胸を裂くような声で鳴くという。この時鳥は親不孝な鳥であった。親鳥は自分は粗食して子には旨いものばかり与えたが、子は親がもっと旨いものを食べていると疑い、責め続けた。悲しんだ親鳥がある日わが腹を裂いて見せると、中には汚い虫ばかりで、子は後悔したが親はもう生きていなかった。音信山の時鳥が血にむせぶように鳴くのは親を思い出して啼くのだと伝わる。「房総志料続篇」は、本来の音信山は姉崎から真里谷へ越える山だとしている。
原典より
鶴舞町矢田音信山光明寺(今の、真言宗。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。