弘法大師が水を引かせた水無川
どんな伝承か
昔、いま水無川と呼ぶ大川は、舟で渡るほどの大きな川だった。あるとき乞食坊主のような僧が来て、金がないが渡してくれと頼んだが、渡し守は金がなければ渡さないと断った。僧は、それなら明日からお前たちの仕事をなくすがよいかと言い、呪文を唱えると大川の水はすっかり引いてしまった。僧は弘法大師で、弘法山へ登ったという。以来この川は水無川となり、いまも水は川底の下を流れ、雨が降ると激しい水が出るのだという。別の語りでは、大師が杖で川を突くと水が引いたともいう。文献には、渡し賃のない若者が溺れた話を聞いた大師が船頭を諭そうとして竿で打たれかけ、河原に錫杖を突き立てて経を唱えると川が干上がったとする伝えもある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪(秦野市(編)・秦野市史)
『秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪』は、神奈川県秦野市の市史のうち、民俗編の口承の部分を収めたものである。前半には市内で聞き取った動物・神仏・妖怪・人や村に関する話を地区名とともに載せ、河童やセンタク婆さん、グアン婆さんなどの妖怪譚を含む。後半の第四節「伝説」は一テーマ一話の方針で百話を採り、動物・植物、水、石・岩、山・坂・道・畑、塚、祠堂、家・村の七つに分け、既刊の類話を〔文献〕として要約して添える。