日照りにも涸れぬ弘法の硯水
どんな伝承か
峠の尾根の西側に、弘法の硯水と呼ばれる泉がある。この地を訪れた弘法大師が富士の姿を眺めて物思いにふけり、その水を汲んで経を書いたと言い伝えられてきた。どれほど日照りが続いても、一度も涸れたことがないという。峠にはまた観水と呼ぶ場所もあり、雪の降る晩に女が通りかかると、傘をさした美しい男が立っていて、ふっと消えてしまうと語られた。人ならぬものが姿を見せたのだという。弘法大師はこのあたりの山を越えてきたのだとも伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪(秦野市(編)・秦野市史)
『秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪』は、神奈川県秦野市の市史のうち、民俗編の口承の部分を収めたものである。前半には市内で聞き取った動物・神仏・妖怪・人や村に関する話を地区名とともに載せ、河童やセンタク婆さん、グアン婆さんなどの妖怪譚を含む。後半の第四節「伝説」は一テーマ一話の方針で百話を採り、動物・植物、水、石・岩、山・坂・道・畑、塚、祠堂、家・村の七つに分け、既刊の類話を〔文献〕として要約して添える。