かい出せば雷雨を呼ぶ金剛水
どんな伝承か
蓑毛の大日堂、金剛王殿の左手の杉並木の隅に、金剛水という底なし井戸の跡がある。年中水かさが変わらず澄み、眼病に効くと村人が目薬にした。旱魃の年にはこの水をかい出して雨を願い、そのたびに慈雨に恵まれたという。ある年、まれな日照りで蓑毛以外の集落は飲み水にも困った。村民が金剛水をかい出そうと寺へ来ると、蓑毛の庄屋は井戸は寺のものだと止めたが、百人が困っても千人が助かるほうがよいと説かれて承知した。三日目の昼近く、宝蓮寺の屋根の上から黒雲が箱根の方へ流れ去ると、大山の裏から入道雲がわいて雷雨が田畑を打った。以来、井戸に石を投げたりかい出したりすることは恐れられ、子供も近づかなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪(秦野市(編)・秦野市史)
『秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪』は、神奈川県秦野市の市史のうち、民俗編の口承の部分を収めたものである。前半には市内で聞き取った動物・神仏・妖怪・人や村に関する話を地区名とともに載せ、河童やセンタク婆さん、グアン婆さんなどの妖怪譚を含む。後半の第四節「伝説」は一テーマ一話の方針で百話を採り、動物・植物、水、石・岩、山・坂・道・畑、塚、祠堂、家・村の七つに分け、既刊の類話を〔文献〕として要約して添える。