笠に書かれた甚五郎の本当の名
どんな伝承か
山之上の岩滝山の麓に、仏甚五郎と呼ばれた老人がいた。日に焼けた顔をしわだらけにして笑いながら、まじめによく働く人だったという。字は読めなかったが白隠禅師を深く慕い、庵を訪ねて法話を聞くのを何よりの楽しみにしていた。ある日、新しい笠に名前を書いてほしいと頼むと、禅師は表に墨黒々と刻苦光明必盛大也と記した。見慣れた自分の名と違うので尋ねると、これがお前の本当の名だ、これをいつも頭にかぶっていれば雪の日も寒くなく真夏の炎天も涼しい、と答えたという。のちに川辺の庄屋からその意味を知らされた甚五郎は、この八字を家の憲とし、笠を家宝として大切に残した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
美濃加茂市史 民俗編――伝説(美濃加茂市(編)・美濃加茂市史)
『美濃加茂市史 民俗編――伝説』は、美濃加茂市の市史民俗編のうち、第一三章「俗信」と、第一四章「伝説 昔話 世間話」の総説および第二節「伝説」を収めたものである。天候・農事・人事にかかわることわざと俗信、民間療法、樹木の禁忌を挙げたうえで、伊深・蜂屋・太田・三和など市内各地区に伝わる三度栗、龍宮さまの淵、火塚、山男、かぶと淵などの伝説六十四話を記す。昔話・世間話の節は含まず、伝説の多くは題に伝承地区の名を添える。