狼と闘って死んだ父駒を祀る山の神
どんな伝承か
昔、田村郡船引町の井堀部落ではどの家でも馬を飼っており、共有の父駒を一頭飼育していた。田植えの頃には馬を黒石山や鞍掛山に放牧したが、ある日、放した馬たちが突然山から駆けおりて来た。最後の牝馬を追って来た父駒は、牝馬がみな戻ったのを見ると再び山へ駆け登った。あとを追った部落の人々が見たのは、駒と狼との凄惨な闘いであった。駒はついに首筋を噛まれて息絶え、人々は狼を追い散らして駒を柴平に葬り、松を植えた。駒の霊を慰めるため大岩の根方に祠を造って祀ったのが今の山の神で、春の種子蒔きあがりに祭を行うので種子蒔山の神、供える焼米から焼米山の神ともいう。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史)
『船引町史 民俗編――昔話と伝説』は、船引町が編んだ町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。昭和五十三年春から町内を回って集めた昔話を話者の名を添えて土地の言葉のまま載せ、坂上田村麻呂や安倍貞任にまつわる地名・社寺の由来など町内の伝説を併せて記す。第一節では語り収めの句、葉煙草ののし作業を語りの座とした伝承の環境、語り手の系譜を論じ、第二節では伝説を自然・歴史・宗教の三つに分けて紹介する。