山本家狐持ちの伝承
どんな伝承か
山本家の狐持ちを正当化するため、当時の人々はいくつもの伝承をこしらえた。先祖は貧乏な紙屑買いで、山道で出会った狐に大切にすれば金持ちになれると言われ、枠を作って売れと教えられて大金持ちになった。もとは枠屋で狐に商売繁昌を祈ったが、金持ちになっても礼を忘れたので狐が怒って憑いた。行商先で見つけた白狐を連れ帰り特別の座敷で飼うと数が増え、金をくわえてきたので富んだ——いずれも枠の製造販売で富を築いたという点で共通する。枠は木綿糸を紡ぐ道具で、実際に山本家は木綿の流通を牛耳り、直江町の仲買人二九名に田畑屋敷を担保として銭四千貫文を貸し付けていた。
原典より
山本家の狐持ちを正当化するために、当時の人々は、いくつかの伝承をつくりあげた。—— 出雲の迷信(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
出雲の迷信(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・1975年(昭和50年))
『出雲の迷信』は、狐持ちの家に生まれた国史研究者の速水保孝が、一九七五年夏のはしがきを付けて著した啓蒙書である。出雲・伯耆・隠岐に根強い狐持ち迷信を、自身の結婚や子ども時代の体験、柳田国男との対話、土佐の犬神統の調査、松江藩の文書、祈禱師と村八分の実例からたどり、家名や人名もほぼ実名で記す。わが家は狐持ちに始まる九章で、憑きものの意味、狐持ちの発生と実態、戦後の打破運動を述べ、狐持ちのなくなる日で結ぶ。