考えることと行なうこと
どんな伝承か
偏見を打ち破る道の遠さを、著者は最近ある出来事で思い知らされた。山陰放送の『土曜スペシャル』が狐持ち迷信を取り上げ、著者も解説者として出演し、斐川町鳶巣の農協婦人部二十二人がゲストに招かれた。一時間近く迷信のばかばかしさが説明され、皆が納得したかに見えたところで、司会者が一人の婦人に、わが子に狐持ちの家から縁談が来たらどうするかと尋ねた。答えはためらいのない『いやです』の一言だった。帰りのバスでも、迷信とはわかったが実際の縁組みはやはり嫌だと皆が同意したという。狐持ちの家がすでに地主の座を失った簸川平野の人々の答えだっただけに、著者は深い衝撃を受けた。
原典より
偏見打破への道はたいへん遠い道のりである。—— 出雲の迷信(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
出雲の迷信(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・1975年(昭和50年))
『出雲の迷信』は、狐持ちの家に生まれた国史研究者の速水保孝が、一九七五年夏のはしがきを付けて著した啓蒙書である。出雲・伯耆・隠岐に根強い狐持ち迷信を、自身の結婚や子ども時代の体験、柳田国男との対話、土佐の犬神統の調査、松江藩の文書、祈禱師と村八分の実例からたどり、家名や人名もほぼ実名で記す。わが家は狐持ちに始まる九章で、憑きものの意味、狐持ちの発生と実態、戦後の打破運動を述べ、狐持ちのなくなる日で結ぶ。