聖地の浜に住みついた久賀の漁師
どんな伝承か
対馬南端の天道山の麓、卒土ヶ浜あるいは不通浜と呼ばれる浦は、犯せば必ず祟りがあると信じられた聖地だった。罪人が逃げこんでも、島の者はあえて追わなかったという。ところが他国の漁民は早くからここへ来て建網を張り、明治九年には山口県大島郡久賀の漁師たちが茂った椎の老木を伐り倒し、粗末な仮小屋を建てて住みついた。よそ者を村に入れない島の習わしのため、彼らにはそこしか場所がなかったのである。親村の豆酘の人々は祟りを待ち構えたが、何事も起こらないまま浜はにぎわい、やがて二百戸近い漁村へ育ったと記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。