残念なりと口をきいた寺の猫
どんな伝承か
根岸鎮衛の『耳袋』巻四によれば、寛政七年の春、牛込山伏町の某寺で飼っていた猫が、庭に下りた鳩を狙っていた。和尚が声をかけて鳩を逃がすと、猫は「残念なり」とものを言った。驚いた和尚が問い詰めると、猫は「猫が物を言うのは我らに限らず、十年余も生きればみな物を言い、十四五年を過ぎれば神変を得る」と答えた。この猫は狐と交わって生まれたため、十年に満たずに人語を発したのだという。
原典より
根岸鎮衛の『耳袋』には、いろいろと不思議なことが記されているが、そのなかで、巻四に、下女が主家に団子を重箱に詰めて報恩のためにあらわれたが、その下女は実は、二、三日前に死んでいたことが記されている。—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年))
『にっぽん妖怪の謎』は、阿部正路が平成四年に著した日本の妖怪論である。神の零落した姿としての妖怪という見方から、記紀や『今昔物語集』『太平記』、西鶴や『耳袋』、鳥山石燕の画図、近代文学や漫画までを引き、鬼・天狗・河童・狐・蛇・鵼などの出現と変遷を論じる。五章に分け、魔女・妖精・吸血鬼など外国の妖怪を扱う十篇のコラムを挟み、あとがきでは秋田の将軍野に生まれ柳田国男・折口信夫の門流につながる著者の来歴を語る。