夢告で湧いた高野の大師湯
どんな伝承か
吉田町高野に住む三崎市兵衛という老人は、七十を過ぎて中風を患い、三年も床についていた。ある朝、夜中に袴を着けた品のよい人が現れ、長く病んで気の毒だから向かいの大師山の麓に水を出してやろう、その水で体を洗えば元気になると告げて消えたと家の者に話し、お大師様のお告げに違いないから早く汲んできてくれと頼んだ。行ってみると麓に清水がこんこんと湧いており、飲んだり体を洗ったりするうちに市兵衛はめきめき回復した。評判を聞いて水をもらいに来る人が絶えなかったが、市兵衛が亡くなると水も止まった。明治四十四年の春には大師堂の前に湯屋が建てられ、高野の大師湯と名づけられた。
原典より
そこですぐに大師山の麓に行ってみると不思議にも清水がこんこんと湧いて出ていた。—— 高田郡史 民俗編――伝説(高田郡(編)・高田郡史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高田郡史 民俗編――伝説(高田郡(編)・高田郡史)
『高田郡史 民俗編――伝説』は、広島県高田郡の郡史の民俗編のうち、伝説の部である。吉田町・美土里町・甲田町・八千代町・高宮町・白木町などに伝わる八岐大蛇退治、毛利元就の百万一心、弘法大師のいろは石、つきものを落とすというはりいぶきの枯木などの話を、土地ごとに取り上げる。多くの話に、かつて村々から提出された「国郡志下調書出帳」の該当記事を原文のまま並べ、古い記録と今の語りとを照らし合わせている。