読経の背後に現れた白い着物の女
どんな伝承か
広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)での話。語り手の娘、といっても四十になろうという一児の母から聞いた最近のことである。年輩の男が仏壇の前で一心に経を読んでいると、何となく後ろに気配がして振り向いた。すると白い着物を着た女が、襖から半身を見せて立っていた。男は一目でそれが死人であると察し、驚きながらも冷静を装って「貴方もここへ座ってお参りをしなさい」と自分の後ろを差して言うと、女は黙ってすっと姿を消したという。その夫婦はもと戦争中から女を集めて商売をしており、女たちにひどい仕打ちをして恨まれることもあっただろう、という話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。