歌舞で鹿と魚を解き放たせた女神
どんな伝承か
針仕事ばかりして暮らしていた女神の窓が急に暗くなり、酒をあふれさせた大杯が差し入れられた。使者となった儀礼用のひげべらが、アイヌラックルの国に大飢饉が起こり、残りの米で醸した酒を捧げて祈るのだと口上を述べた。女神は酒を六つのほかいに移し、神の衣と頭巾を着けて巫術の棒で炉縁を打ち、天へ海へ山へと届く声で神々を招いた。集まった神々に酒を注いでまわり、川路の神と川口の神とともに歌い踊って鹿の神と魚の神の機嫌を直させ、ついに鹿の袋と魚の袋を下ろさせた。以後アイヌは獲物に木幣を捧げるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。