赤生津の渡し舟を追ってきた古猫
どんな伝承か
むかし、富山の薬売りが赤生津の旅籠に泊まった。夜中に厠へ立つと台所で変な音がする。のぞくと猫が戸棚の中で何か食べており、人の気配に気づくと立ち上がって前足で戸を締めて出ていった。翌朝、女将が食べ物を盗んだと女中を叱っているので、薬売りは昨夜見たことを語った。女将が、この猫は二十年も生きているからどうにかしなければと言うのを、猫は炉辺で聞いていた。その日、薬売りが赤生津の舟着き場から渡し舟に乗り北上川の中ほどまで来ると、猫が追ってきて喉笛を食いちぎり、川上へ逃げて行ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。