大杉に棲む大蛇を斬った杣人松兵衛
どんな伝承か
船岡の庄内に、六十人力といわれた杣人の松兵衛が住んでいた。高さ三丈九尺の大杉を伐りはじめたが、一日目に半分まで進めた伐り口が、翌朝には元どおりふさがっている。松兵衛は切り屑を片端から焼き、その日は伐り口へ大石を押し込んで帰った。すると夜半、山鳴りとともに家が締めつけられ、見れば大蛇が屋根に巻きついている。格闘の末に斧で首を落とし、遺骸は妻と二人で裏の小沢へ運んで捨てた。裂けた杉には何かが抜け出た跡があったという。翌年から沢には旨そうな茸が生え、用心していた夫婦もある年つい口にし、半時とたたぬうちに二人とも死んだ。杉の切り株と大石は今も残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。