白旗を立てる鹿姫と赤児の亡魂
どんな伝承か
城の妖怪を集めた章の一条である。秋田県仙北郡花館に松山があり、そこの城を鶴羽形城とよぶ。昔、源義家がこの鶴羽形城を攻めた。城主は安倍氏で、その娘に鹿姫がいた。鹿姫は敵将義家に恋い焦がれ、人目を忍んで義家の陣屋に通って契りを結び、懐胎して子を産んだ。父は怒って姫とその赤児を捕え、黒姫山に生き埋めにした。姫の通った山道を長根、鬘を落としたところを鬘沢といい、その川の水には毒が含まれ、飲んだ者は落命するという。五月四日の夕刻には黒姫山の沢の水が一時白くなる。これは姫が米を磨ぐからである。翌五日には峰の頂に白い旗がいく本も立ち、立てるのは赤児の亡魂で、見た者は三年の間に絶命するそうだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。