畑に戻る奴奈河姫の霊石
どんな伝承か
出雲から越の地へ渡ったという女神奴奈河姫が携えてきた石が、青海町比利谷の畑に立っている。石塔に似た形で、よそへ移されるのを嫌うらしく、何度運び出しても一日と経たぬうちに元の場所へ戻ってしまう。数年前にも畑の持ち主渡辺林平の妻と次男良作が畑の外へ出したが、翌日には元通りだったという。この畑は古い塚の跡と伝えられ、そばへ馬や犬を引いて行けば必ず斃れるといって忌まれてきた。塚の近くには枝の広がりに畳数枚も敷けるほどの大杉が立ち、三月二十四日の夜半には黒姫山の権現へのぼる竜灯がその梢で一休みしたと語られたが、大杉は洞から火を発して枯れてしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。