母の体を破って生まれた鬼子
どんな伝承か
酒顚童子は中蒲原郡菅名荘の矢津村の生まれだという一説がある。父は相模国から矢津村へ移った山崎次郎右エ門という豪農で、初めて身ごもった妻は十五か月ののち七日苦しんで死に、嬰児は母の体を破って生まれた。里人は鬼子だと恐れたという。天暦年中のことと伝える。容貌は美しかったが八歳で十四、五の体格になり、生まれつき酒を好んで酔えば全身が赤くなり、争いを好んだ。父は諭しても改まらないため山中へ誘い、仙見谷川の淵へ突き落とす。里人はそこを子拋ヶ鼻とも難越の鼻とも呼ぶ。童子は岸の松に取りついて笑い、藪へ消えた。翌夜戻って邸内に欅二株を植え、砂子塚村へ去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第3巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全65話(山形・福島・新潟)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。