鍋の中の赤子とふくつの貝
どんな伝承か
むかし、庚申待をしている人達のところへ、素性のよく分からない一人の男が「わたしも仲間に入れてくれ」と訪ねてきた。無理にも参りたいというので仲間に加えた。廻り宿のその家では大きな鍋で御馳走を煮ていたが、家の者が席を外した隙に仲間の一人が鍋の蓋を開けると、中には赤子を丸ごと煮たものが入っていた。恐ろしくなった仲間たちは、眠っていた男一人を残して逃げ出した。目を覚ました男は誰もいないので、御馳走になったのだからと一人で食べた。じつは御馳走をしたのは庚申さまで、残った男は東方朔、煮られていたのは赤子の姿に見えるふくつの貝であった。東方朔はそれを食べて八千年も生きたといい、今も「東方朔は八千年」という諺があると伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。