九穴の貝を食べた八百比丘尼
どんな伝承か
若狭国小浜から一人の老比丘尼が来て土地を相し、村の地頭石井冊波守に請うて一宇を建てた。地名にちなんで金川寺と号し、みずから刻んだ阿弥陀の霊像を本尊としたという。住職は年を経て八百歳の齢を保ち、世にこれを八百比丘尼と呼んだ。寺の前には鶴淵という淵があり、そのかたわらに奔馬に似た奇石が二つ並んでいる。俗説では、この比丘尼は秦勝道の娘だという。勝道はかねて庚申を尊崇し、村の父老を集めて庚申講を営んだが、ある日、駒形岩のあたりの鶴淵の底から竜神が現れて一同をもてなした。その中に九穴の貝があり、人が怪しんで食わずに道に棄てたのを勝道が拾って帰り、娘が食べて長寿を保ったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。