小町の病を癒した吾妻川の霊湯
どんな伝承か
今から千余年前、仁明天皇の寵愛を受けた小野小町の父、出羽郡司良実が行方知れずになった。十八歳の小町は帝に暇を乞い、父を尋ねて旅に出たが、慣れぬ旅の途中で病にかかり、三州の薬師如来に参詣した。その夜の夢に、北方百里の吾妻川の岸に湧く温泉に浴すれば病も癒え、父にも巡り会えると告げられる。旅の果てに倒れていると白髪の老翁が現れ、小町を吾妻川の岸へ連れて行った。そこに湧く霊湯に十数日浴すると、病はすっかり癒えた。これが今の小野川温泉で、その時に入った湯を尼の湯という。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。