城の図面を描いた霧の中の狐
どんな伝承か
厩橋の城を築くとき、大工の棟梁は立派な城にしようと思案し、明け方の利根川べりにたたずんでいた。南の空にぽっかり白い雲が湧いたかと思うと、あたりは深い朝霧に包まれる。霧の中に金色の目が二つ光り、よく見ると狐であった。狐は長い尾を引きながら行き来し、その跡が赤い筋となって浮かび上がる。それはまさに棟梁の思い描いていた城の図面だった。狐は東へ去って消え、棟梁はその図のとおりに城を築いて殿様に褒められたという。消えた辺りに稲荷が祀られている。
原典より
その昔、厩橋城築城の時、大工の棟梁はいかにして立派な城を築こうかと、ある朝早く利根川べりにたたずんで、構想をねっていた。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。