野茨で土ぐもを退けた黒坂命
どんな伝承か
筑波の峰を望み高浜の海に臨む平野は住みよく、田畑も実り漁も塩焼きも盛んで、村里の人々は豊かに暮らしていた。ところが平野の中ほどに山の佐伯・野の佐伯と呼ばれる土ぐもがいて、崖や斜面に穴を掘って住み、人の隙をうかがっては食物や衣を奪い、人を殺すこともあった。黒坂命は彼らが穴を出て野に遊ぶ隙に、太い野茨を集めて穴の口をふさぎ、騎馬の兵で追い立てた。逃げ込もうとした土ぐもは茨に刺されて倒れ、ついに滅びた。茨で退治したのでこの地を茨城の郡と呼ぶという。
原典より
西には紫に輝く筑波嶺がそびえ、南には高浜の海をひかえた大きな平野があった。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。