椎の老木に生えた数千の茸
どんな伝承か
片庭の八幡様の下に、金持ちの酒造家があった。その家の老女はけちで、金のためなら人を苦しめても平気な性質だったという。ある夏の夕方、身なりの卑しい坊さんが托鉢に立つと、老女は汚い坊主は入ってくるなと罵り、水でも飲んで念仏を唱えていろと言って追い返そうとした。坊さんはそれではと目を閉じて合掌し、大声で呪文を唱えながら境内の椎の老木を指した。すると老女の姿はかき消え、椎の老木に数千の茸が生じたという。この坊さんは弘法大師であったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。