目玉の玉を残した沼の主と子守り石
どんな伝承か
黒磯の板室から少し北へ行ったところに、子守り石と呼ばれる石があるという。むかし近くの沼が涸れ、住めなくなった沼の主が、ある夜よろず屋という呉服屋に宿を借り、そのまま若主人と夫婦になった。産の場を見るなという約束を破って夫が覗くと、嫁は大蛇の姿で生まれた子をなめていた。正体を知られた嫁は玉を一つ置いて姿を消す。玉をなめ尽くした子を背負い、夫が子守り石で願をかけると、沼から美しい姿で現れ、これは自分の目玉だという玉を渡し、明け暮れがわからぬので暮れ六ツの鐘をついてくれと言い残して消えた。のちに沼ヶ原へ狩りに入った者が、乙女の滝で髪を洗う盲いた女を見かけたと伝える。
原典より
<柳田——「児守石」〉○伝承地 栃木県黒磯市板室・穴沢・百村 こっから少しばかり北へ行ったところに子守り石と呼ばれる石があります。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。