住職を救った義猫と旅僧に化けた古鼠
どんな伝承か
御前崎の遍照院、もとは乾長寺といった真言の寺で、住僧が沖を流れる敷板の子猫を助けて連れ帰り、十年のあいだ可愛がった。ある日、隣の猫が伊勢参りに誘うと、寺の猫は主人の身に大事があるので留守にはできないと断ったという。その夜更け、天井で凄まじい物音がし、翌朝改めると天井から血が流れていた。上がってみると寺の猫が血に染まって倒れ、傍らには隣の猫と、旅僧の衣をまとった二尺ほどの古鼠が死んでいた。鼠が僧に化けて住職を襲おうとしたのを猫が防いだのだと人々は感じ入り、猫の塚を築いて回向した。鼠もまた猫のそばに埋められ、以来この塚に祈って漁に出れば大漁になるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。