餅の井に身を投げた松前姫
どんな伝承か
松前姫は世々開長者の正妻が産んだ娘だった。当時の中野一帯は水に乏しく、高時川をせき止めて運河を掘り、村へ水を引こうとしたが、南側にあった岩に阻まれて水は流れてこない。姫は虎御前山の麓の岩上神社に詣で、工事の成就を祈ったうえで餅の井に身を投げたという。人々は姫を井名神様と呼び、はじめは餅の井の近くに祀ったが、中野からは遠かったため、のちに岩上神社へ移して祀るようになった。
原典より
〔文献〕○滋賀県東浅井郡虎姫町中野――『近江輿地志略』巻之八十五に、せらぎ長者が井口越前に綾・綿・餅を贈り、高月川(高時川)の水を分けてもらったが水があがらず、娘の松の前(松前姫)が井堰に沈んで水が流れるようになったため…—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。