海に落ちた子を救った報恩の亀
どんな伝承か
延喜の帝の御代、中納言藤原山蔭には端正な男子があり、継母もことのほか可愛がるので父は安心して養育を任せていた。山蔭が大宰権帥として下る途中、継母は鐘の御崎のあたりで乳母を使ってその子を海へ落とさせ、しばらくしてから泣き叫んで事故を装った。夜通し嘆いた父の夢に大亀が現れ、探せと告げる。夜明けに眷属が海面を漕いでゆくと、笠ほどの亀の甲の上に子が座っていた。のちに夢へ現れた亀は、かつて住吉参りの折に買い取って海へ放してもらった亀だと名乗った。子は法師となって如無と名づけられ、僧都にまで昇ったという。山蔭は摂津国に総持寺を建てた人である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。