鯨に乗って現れた青峰山の本尊
どんな伝承か
正福寺の縁起は、当山を神明がはじめて鎮座した旧跡で、国中に比べるもののない霊場だと説く。天平のころ、聖武天皇の勅を受けた行基が伊勢に詣でて神託を請うと、東に天朗峰、また人高山と呼ぶ山があり、観世音の遊化する霊嶺だから伽藍を建てて尊像を安置せよと告げられた。本尊の十一面観世音は人の彫刻ではなく、むかし海中から鯨に乗って現れたもので、仏を載せた鯨はたちまち石と化し、いまも鯨石と呼ばれている。のち婆羅門僧正が登って礼拝すると光明が四方を照らし、腰に蓑をつけた漁父の姿であったので、僧正はこれを三重に籠めて秘したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。