阿漕塚に建てられた碑をめぐる嘆き
どんな伝承か
あこぎ塚には古い榎が一株あるだけで、千年を経ても朽ちない跡地だといわれていた。ところが天明のころだろうか、丸みを帯びた石が建てられ、「阿漕塚」の三文字は森内其章の筆によるものだが、裏面に念仏講中や町人の名を刻んだのは無下なことだと嘆かれた。ほどなくその石は取り除かれてもとの姿に復し、人々は喜んだ。しかし近ごろまた雁路という者が石を立て、芭蕉のものでもない発句を彫った。どれも根拠のない杜撰な仕業で、まことに殺風景だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。