中万の市で焼かれた人喰い鬼之丞
どんな伝承か
伊勢の南、押淵の岩屋に鬼之丞という大男が住み、鬼と呼ばれていた。黄金の鶏と槌を秘蔵し、隣村の男から買った松の根を売り歩き、毎年十二月二十八日に市の立つ櫛田川岸の中万へも通った。やがて人肉の味を覚え、市の賑わいに紛れて子どもをさらって食うようになる。ある年、酒屋で赤子の手を肴にしているのを見つけた里人は、そ知らぬ顔で酔わせ、家財を運び出したうえ家もろとも焼き殺した。鬼之丞は黄金の鶏と槌だけが惜しいと言い残したという。灰は櫛田川へ流され、以後中万では毎年この日に鬼の祭りをし、川中を走り回る習わしになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。