白雲院の号を生んだ志津の墓の縁起
どんな伝承か
いつの世のことか明らかでないが、淡路に小聖という者があり、たびたび禁闕に出入りしていた。宮嬪の賤、これを志津と読む、が小聖を見て慾念を起こし、寝ても覚めても忘れられず、花島の使いを通わせた。小聖はこの山に遯れ入ったが、賤は追って嶺の崎嶇たる道に至った。そこへ白雲が掩い映じて、にわかに小聖の去った所が見えなくなり、賤は悲泣に堪えず路傍に愁死した。時の人がこれを哀れんで葬り埋めた。この墓に雲が立てば必ず雨が降る。これを賤の余涙といい、白雲が小聖を擁したのは不動の擁護によるとして、院号としたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。