香落へ移った八幡長者と小太郎岩
どんな伝承か
伊賀見に八幡長者屋敷跡がある。大和と伊賀との境で杉山になっている。伊賀の国黒田の荘一之井に道観という長者があり、文治年間、九郷の田畑を所有して黄金の威力で栄華を極めたが、酒肉にふけり乱行も多かった。奥方の小満は病に倒れ、長男の左門も身を持ち崩し、次男の梅若は難病にかかって、兄弟は相次いで死んだ。追放を命ぜられた一族は建久元年、大和国宇陀郡曽爾の山奥、河内の里に移り、地名を香落と改めて八幡を守護神とし大きな邸を構えた。世にこれを八幡長者屋敷という。末子の小太郎は孝行者であったが、召使となった毒婦お竜が一家乗取りを企て、母と姉の時姫を毒殺し、小太郎を岩上から突き落そうとして逆に落とされ最期をとげた。そこを字小太郎といい、その岩を小太郎岩、小太郎落しという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。