茅の輪を授けた速須佐能雄神
どんな伝承か
昔、江の熊(今の天王社付近)に蘇民将来・巨旦将来という兄弟がいた。兄の蘇民は江の熊を弟に落とし入れられて非常に貧しく、弟の巨旦は富んで自ら長者と称し、石の門を築き鉄の壁をめぐらして豪勢を極めていた。ある日、夕暮れに一人の旅人が巨旦の家を訪れて宿を乞うたが、巨旦は石門を固く閉ざして中にも入れなかった。これを聞いた蘇民は気の毒に思って出迎え、なにもないので栗の幹を敷いて寝床を作り、栗飯でもてなして一夜の宿をした。旅人は大いに喜び、実は自分は速須佐能雄神であると明かして、疫病が流行した時には子々孫々まであなたの名を戸口に貼り、茅の輪を作ってくぐれば免れられると言い残して去った。その後、戸手の天王社ではこの茅の輪くぐりが疫病よけのまじないとして、つい最近まで年中行事に続けられていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。