蚊に追われて天応を去った姫
どんな伝承か
市杵島姫は天応の地をたいそう気に入られた。天王山や天狗崎山など内海の眺めもよく、二、三日お泊まりになったが、どうにも蚊が多い。これは蚊なわん、とこぼして、とうとう宮島へ移られたという。呉の沖の麗女島にも姫が御座船のともを取られた跡があり、そこへ船をもやえば蚊に攻められないと伝える。また、姫が夜通し蚊に責められて明けよ明けよと言われた所を明けの夜と呼び、そこには昔、阿幾乃辺の池があったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。