霜月十五日に降るすりこぎ隠しの雪
どんな伝承か
お大師様がある宿にお泊まりになったが、その家には差し上げるものが何もなかった。お大師様が「来る道に、そばがはでに掛かっていた」と言われたので、主人はそれを盗みに行こうとしたが、主人の足はすりこぎであった。足形がついて分かってしまうと案じ、そのことを話すと、お大師様は「それなら心配はいらない。わしがようするから、そのそばを取ってきて、そばきりにして食べさせてくれ」と言われた。主人は言われたとおりにそばを取ってきて差し上げた。すると明くる朝、霜月の十五日、薄雪がちゃらっと降って、足形は隠れて見えなくなっていた。これをすりこぎ隠しの雪というのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。