目の飛び出た鯛を目出鯛と売った狐
どんな伝承か
昔、能美島の大柿に利平という老いた船頭がいて、月に一度大阪へ荷を運んでいた。ある秋、船底で音がするのでのぞくと、鯛の箱のふたが開いて鯛の目玉がとび出していた。二度三度と続くので船底にかくれて見ていると、狐が出てきて目玉を吸い出したので頭をなぐりつけた。狐は比治山のおさんという古狐で、鯛の目玉が好きで島へ渡ってきたが、目のとび出た鯛は自分が売って儲けさせるから助けてくれと頼む。大阪で魚屋に化けて売り歩いても売れず、伏見の稲荷に知恵を借りると、目が出た鯛だから目出鯛だといって売れという。『瀬戸の目出鯛じゃ』と売り歩くと三倍も四倍もの値で売れた。利平は孫の土産を買い、比治山へ帰りたいという狐を連れて能美に帰った。江波のおさん狐はこの狐の子孫だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。