手形を押して詫びたカワコと妙薬
どんな伝承か
旭川の上流は蒜山盆地を東西に横切って流れている。昔、この川辺に馬をつないでいたところ、近くの淵に棲むカワコ(河童)が馬の尻尾を体に結びつけ、一気に淵へ引き込もうとした。カワコも強かったが馬は人間のようにはいかず、逆に引き上げられて頭の皿の水をこぼしてしまった。帰ってきた馬の飼主に見つかり、カワコは「もうけっしてここには帰って来ません。証拠に石に手形を押します」「傷の妙薬の秘伝を教えます」と命乞いをして許された。飼主は湯原の玉沢屋という運送屋で、玉沢屋には今でもカワコの教えた傷薬があり、切り傷にオトギリ草をつけるとたちどころに治るという。カワコの押した石はカワコ石と呼ばれ、上福田にある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。