鏡餅を射た大原長者の没落
どんな伝承か
昔、安芸の国佐伯郡菅沢村大原の里に大家族の長者が住みついていた。広い田畑と続く豊作で穀類は蔵や家中に満ち、俵につめた米を飛石がわりにして一里余りへだてた日室の里まで続き、なお余りがあったという。ある年の正月、わらで作ったはまを射るのに飽いた長者のむすこが、神棚の大きな鏡餅を下男に転がさせ、三度目にねらいたがわず射当てると、傷口から真赤な血潮が流れてあたりの雪を赤く染めた。それから長者の家には悪いことばかり続き、苗代の仕度に日室の里へ様子を見に出る途中、土手の岡から打尾の里を見ると田植の盛りだった。驚いて帰り苗代を作ったが時期がはずれて米が取れず、家運は次第に傾いてついに絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。