乳が出た祖母の願と腹帯奉納
どんな伝承か
嫁は孫を産んだものの、産後の肥立ちが悪くてすぐ死んでしまった。このままでは孫に乳を与えることができない。叶うものなら、この婆の乳が出るようにしてもらえまいか。婆は不可能と知りながら観音に願い続けた。そしてある日、婆の乳房から乳が出たのである。この話がいつごろ生まれ、どのようにして今日まで伝わってきたのかは分からない。それからというもの、母乳が出ますように、子供が無事に生まれますようにと腹帯を供える若い女性、年寄りは若い者に世話をかけまいと肌着を奉納する老女など、観音を訪れる信者は後を絶たないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。