雲に乗って隠岐に杉を植えた八百姫
どんな伝承か
二千数百年の昔、伯耆の弓ヶ浜に命と姫が住んでいた。命はよその家の宴に招かれた折、調理場で頭が人、胴が魚という奇妙な生きものが捌かれているのを目にする。気味悪く思って食べるふりをし、懐へ入れて持ち帰り棚へ置いた。姫はそれを土産と思って口にすると、身体がとろけるようになって仮死の状態に陥り、やがて蘇ると気分は爽やかで、容貌は花のように若返っていた。蟻の声まで聞き取り、千里先も見通せるようになって、以後は年を取らなくなったという。七代の子孫を見送った後に若狭の小浜へ移り、八百年を生きたので世の人は八百姫、八百比丘尼と呼んだ。のちに雲に乗って隠岐へ渡り、記念に植えた杉が玉若酢命神社の八百杉である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。