網にかかった人魚を放した網元
どんな伝承か
馬路の網元に、黒右衛門という情け深い男がいた。ある時その網に人魚がかかる。漁師たちは見世物にするか売って金に換えようと言い立てたが、黒右衛門は取り合わず、海へ返してやった。人魚は沖へ泳ぎ出しながら浜を振り返り、涙を流して「めんたし、まじのくろえもんさん、ゆび一本でも千メ目」と告げたという。指一本でも千メ目の値打ちがあるのに、という意味である。人魚は不老不死の薬と信じられていた時代で、以来この浦の人々は長命を保ったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。