多鯰ヶ池の名を生んだ白蛇おたね
どんな伝承か
大昔、摩尼山の麓に長者があり、その家におたねという女子衆がいた。雪の降る夜、若い者が集まって話していると、おたねはうまい物を取って来てやると言って外へ出て、柿をたくさん抱えて戻る。こんな雪の夜にどこに柿の木があるのかと怪しんだ若者が跡をつけると、おたねは谷間の大きな池に着き、着物を脱いで蛇体となって島の柿の木へ登った。若者は驚いて帰り、その晩を限りにおたねは戻らなかった。以来この池を多鯰ヶ池と呼び、おたねは池畔の森に祀られ、暖かい日には白蛇の姿で椿の根方に現れることがあるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。