出雲へ酒造りに行く牡鼬トマス
どんな伝承か
トマッコやトマスといった呼び名は、もともと鼬をさす方言で、徳島の祖谷ではトマコ、薩摩ではトマイ、加賀ではトバ、上越ではトマという。鳥取県八頭郡の佐治あたりでいうトマスは、とりわけ牡の鼬を指した。この地では、トマスは山の神に伴われて出雲へ酒造りに出かけてしまうため、十月の初亥の日から二月の初亥の日までは土地にいない、と語り伝えていた。『綜合日本民俗語彙』三巻に見える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。