幟竿から小蛇が出る中村氏の屋敷
どんな伝承か
徳島城下に住んだ中村氏の屋敷にまつわる話である。先代が端午の節句に幟を飾ったところ、その日の昼に新しい幟竿が中ほどから折れ、折れ口から小蛇が出てきた。同じことが後にも起きたため、この屋敷で幟を立てれば凶事があるとして、男子が生まれても幟を立てぬ家風になった。ところが三十年余り前、家臣に男子が生まれた際、古い言い伝えはあっても今さらそんなことはあるまい、祝いに幟がないのは不吉だと判断して一本立てたところ、五月四日の昼過ぎ、風もないのに丈夫な竿が中ほどから折れ、先例どおり小蛇が出るのを見た人がいるという。この屋敷では草が茂っても蛇を見ることはなく、怪異の訳はわからないと記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。